人間科学研究所では、設立以来、組織あるいは個人が抱えるさまざまなテーマに対してワークショップを行ってまいりました。
そして、20年以上このワークショップを続けていく中で、気がついたことがあります。
それは、
「活性化された組織」であれば、必ず成果が出る(もし、それでも成果がでない場合は、その仕事の仕組みそのものに問題がある)
ということです。
「人間関係ということを深く理解し、関係が改善されていくと、
個人のみならず、組織の活性化や、仕事の業績も、好転しはじめる」
ということがわかりました。
なぜ今、こんなにも職場やそこで働く人達が「やる気がなく」「暗く」「冷え切っている」のか、それは、この社会は誰一人として例外なく「人と人の関わりで成り立っている」という大原則を忘れてしまったから、に他なりません。
組織は人数が多い少ないに関わらず、一人一人の人間の集まりです。
組織の中にいる一人一人の持っている個人の資質がよりよく発揮されてはじめて組織は活性化しはじめます。
では、「活性化している」とは、どういった状態でしょうか?
それは、そこで働く社員一人一人が本当に「支えあい」「励ましあう」雰囲気である、ということです。
隣にいる人との絆がしっかりとある、と心底感じることができることです。
今は、どこに行っても「人間関係が希薄で・・・」という事を言われます。
そして社長多くが「うちの社員はコミュニケーション能力が低くて・・・」と言います。
企業の人事担当者はとにかく「コミュニケーション能力の高い人を」と言います。
しかし、「コミュニケーション能力」とは一体どういったものでしょうか?
アメリカ人のように顔を合わせたら「ハロー!」とにこやかに話しかけ、とにかく声をかけあい、抱き合い、オーバーなリアクションを表現することがコミュニケーション能力が高い、ということではありません。
私たち日本人はそもそも、西洋とは異分化を持つ民族です。
アメリカ人は、夫婦でも家族でも常に「愛してるよ」「大好きだよ」「きれいだよ」と声に出して、プレゼントをして形に表さなければその対人関係がうまくやっていけない社会です。
「私はあなたに敵意はないですよ」ということをわざわざあえて口に出さなければストレスがたまっていく社会、そして民族なのです。
それに比べて私達日本人は違います。
「相手の気持ちを察する」
「相手の気持ちを慮る(おもんばかる)」
という声に出さなくても「分かり合える」といった世界中どこを探しても見つからないほど特異な性質をもった民族なのです。
また、自分の気持を伝えることに対しててストレスを感じてしまう民族、それが日本人なのです。
「言わなくてもわかってほしい」
「気持ちを汲み取って欲しい」
「表情から感じ取って欲しい」
これは恐らく世界中どこを探しても日本人だけ、なのではないでしょうか。
それは「良い」「悪い」の問題ではなく、民族の違い、なのでどうしようもありません。
しかし、残念ながらもうすでに日本人は、
「察する」
「相手の心を汲み取る」
「空気を読む」
「場の雰囲気を壊さない」
「表情を見たらわかる」
などといった日本人だけが持っていた高度なコミュニケーション能力があきらかに低下しています。
日本の経営者は感情や心といったいわゆる情緒的なことを否定し、論理的、かつ理性的に判断していくことを主としてきたように感じます。
いわゆる「知識を理解し、処理していくこと」を加速させてきたように思います。
もちろん戦略的思考を学ぶことや、論理的な判断ができることは必要なことです。
しかし、問題なのは、知識が増えれば増えるほど、それぞれの人間からあふれる直感力や発想力、そして感じる力を失ってしまっていった、ということです。
人間とは、非常にバランスの取りにくい生き物です。
ぱっと人に会った時、「何かおかしい」「違和感を感じる」
そして「これは正しいこと」なのか「おかしいことなのか」
など一瞬にして見抜く力、これなどはまさに「直感」のなせる業です。
そして人としてどういった行為が、人が美しいのか、また醜いのか、
一目見て感じて分かってしまう力、それもまた「直感」です。
生き抜く力として人間に備わっていた直感力が失われると、私たちは一生迷いながら与えられる情報に操作されながら苦悩の人生を送ることとなります。
自分の軸、となる「感じる力」が失われてしまった時、その人の中から「やる気」があふれてくることはありません。
会社を経営するには、こういった「人はどういう時に自らやる気になるのか」というメカニズムを知っておく必要があります。
また、これからの会社経営に必要なのは、
「人と人との繋がり」そして「絆(きずな)」です。
一緒に働く人を支えあい、励まし、敬う気持ち。
「私もそう感じる」という共感しあえる関係。
「言わなくてもわかっている」という阿吽の呼吸、そして強い仲間意識。
私たちが生きている人間社会には空気を吸うように当たり前に必要なもの。
それが日本人だけが持つコミュニケーション能力、です。
そして、その能力は今こそ、日本の企業には絶対に必要なのです。
絵に描いた餅、理想論だとお感じになりますか?
「そんなことはわかっているけど、実際は大変なんだ」とおっしゃるお気持ちもわかります。
しかし、実際に、職場の人間関係を徹底的に改善し、絆作りをすすめ、組織としても潤いはじめている、という会社も実際に数多くあります。(→事例紹介)
冷え切った組織の中で働く社員の心は堅い堅い殻にこもっています。
殻が厚くなった社員の心は、もうこれ以上傷つきたくない、という意識が働きますので
ますます自己保身に走ります。
自分さえよければいい、その場がよければいい、ということです。
仲間や上司の言うことは素直に聞けず、無関心を装い、仲間と協力して働く、という意識などは到底持ちえません。
冷え切った組織の中では、そんな冷え切った社員が1人2人、そして3人とどんどん増えていくのです。
感情は鐘の如くそのまま相手に移ってしまうのです。
雰囲気の連鎖といいましょうか、悪い空気が社員を覆い始めます。
社内のコミュニケーションがうまくいかないのは、また、組織が停滞し活性化しないのは、社員たちのコミュニケーション能力が低下しているから、ではありません。
これはさまざまな職場にワークショップにおうかがいして痛切に感じることです。
「何も発言できない」「言ってもしょうがない」「言いたくなくなる」など個人の意見を黙殺してしまうようなコミュニケーションの環境が問題なのです。
今、この時に変わるべきは「個人」ではなく、「組織」なのです。
人間科学研究所の池田弘子がファシリテーターとして展開するこの「ダイナミックワークショップ」は、今まで多くの企業や教育機関、行政機関において、全てのワークショップを「人と人との関わり」を専門に独自の教育システムを行ってまいりました。
従来のいわゆる「研修」とは全く違う概念で行っているため、「社員研修」「組織活性化研修」などといった通常の教育システムは全く異なる考え方や理論でワークショップを行っております。
通常、研修と申しますと、経営者側から、社員側に「身につけて欲しい能力」を習得させるために行います。
それは知識教育であったり、接遇教育であったり、営業能力であったり、します。
しかし、研修の結果の全ては、「一過性」なもの、であります。
「研修をして変わったのは3日だけ」
「その時限り」
「知識を聞いただけで、できるようにはならない」
「その時は刺激になっていいけど、それだけ」
など、研修に対する評価は良くない、というのが通常です。
ダイナミックワークショップの特徴は、
「継続的な教育」が基本にある、という考え方です。
単発的に「研修」を行っても、全くといっていいほど意味がない、と私どもは考えております。
「研修」が外から無理矢理人間を刺激するもの、だとしたら
「ダイナミックワークショップ」は、その個人の内なる欲求を引き出す、ものとお考え下さい。
ここで
人間の大原則をお伝えします。
人は「やらされたこと」は続かない
人は「自らやりたいと真に思ったこと」しか、続かない
ということです。
あなたの会社の社員はいかがでしょうか?
自ら働くことに喜びを見出せているでしょうか?
組織の論理で言えば、
「お金を払っているんだから言うことをきかせて当たり前」
という考えがあります。
もちろん、お金を払っているんだから、言うことを聞いて働いてもらって当然でしょう。
しかし、効率が悪いのです。
やる気にあふれて、喜んで自発的にやっている人と、
無理矢理仕事だからしょうがない、と心の中で思いながら、やる気のないまま仕事をしている人。
さあ、どちらの社員に仕事をまかせたらあなたは安心ですか?
仕事だからしょうがない、という社員ももちろん指示命令で言われたことは作業をするでしょう。
しかし、その先には大事なお客様がいます。
お客様は、そんな社員を見てどう感じるでしょうか?
あなたの会社を「いい会社」だと認識するでしょうか?
少し考えればわかることです。
自分の会社を愛していない社員、そして冷めている社員、仲間と繋がりがない社員、そんな社員がたくさんいる会社はどうでしょう?
会社がどうなろうと自分は知ったことではないので、お客さんのことなど考えることができない。
クレームが出ても、上司には報告しない、できない。そして、ミスを隠そうとする風土ができる。
こんなことがどんどん起こり始めます。
社長の知らない間に、それは水面下でじわじわと起こっているのです。
まるでシロアリが食いつぶしていくかのように。
そしきトップに情報が上がって来た時には「時はもう既に遅し」の状態です。
本当に効率よく社員に仕事をして欲しいと思うのなら、職場の人間関係をまず見直すことです。
いつの時代も敵は内にありなのです。
中にいる人間を「あたたかい感情」で満たすことが大事です。
そして、「安心して働ける職場」を作ることです。
つまり、「損して得とれ」から「尊して徳とれ」なのです。
あたたかい感情の中でしか、人は本当に心を開き、行動を起こしません。
ぎすぎすした職場や冷え切った人間関係が当たり前になった職場では、「やる気」や「能力」など引き出されるはずもないのです。
隣にいる人間が信じられない職場では疑心暗鬼になり、同僚であっても弱さを見せられず、互いに無関心になったり、斜にかまえて振舞ってしまったりするものです。
逆に、内にいる人間同士の繋がりを強くし、絆を作り上げることで、職場は驚くほど活性化しはじめます。
経営者がこうして欲しい、といった願いが早いスピードで実現します。
最終、人が動くのは「気持ち」です。
それは「この人と一緒に働きたい」「この上司のために一役に立ちたい」そういった想いを社員一人が一人が持てた時、それは本当に強い集団になれるのです。
敵はいつも内にあり、なのです。
今は、時代の大きな変化や、価値観の多様化、情報の氾濫、そして携帯やインターネットの普及などから、人間同士が関係を築くことが非常に難しくなっている、ということが言えます。
人間科学研究所のダイナミックワークショップとは、人と人との「繋がり」を作り、自ら考え組織風土を作るためのものです。
コミュニケーション能力は、「身につける」ものというよりは、すでに潜在的にあるものを「引き出す」ものであると考えます。
私が今までさまざまな企業や学校におうかがいし、ワークショップを行う中で感じたことは、社員一人一人の「能力」はほんの数パーセントしか引き出されていない、ということでした。
人は一人では決して能力を発揮することはできません。
自分以外の誰かが「認めてくれる」「見ていてくれる」ということがあってはじめて自分の能力に気が付くのです。
そして、自分でも思いがけない能力が発揮されることがあります。
グループワークで個人の能力を引き出すために必要な要素は二つあります。
この2つが揃った時、人ははじめて自分の中にあった内なる能力に気が付くのです。
人は一人では変われないのです。
では、実際のダイナミックワークショップの流れをご説明していきましょう。
吉本歯科医院では、抱える問題が3点ありました。
この歯科医院では、通常の歯医者さんと違い特殊な技術や最先端の医療を提供したい、という院長先生の想いがありましたが、それを実際に患者さまに伝えていくスタッフたちとのコミュニケーションがうまくいっておらず、さまざまなセミナーに行って勉強したり、教材を購入したりしていましたが、効果は全く上がらなかったそうです。
ダイナミックワークショップの原則は
ということです。
まず最初に行ったワークは
この職場の中では、「私は自分の意見を言ってもいいんだ」「ちゃんと聞いてもらえるんだ」、ということを全員が認知するためのコミュニケーションワークショップです。
これは、その職場の雰囲気がどの程度かによって回数が変わります。
今までの職場風土で、「自分の意見など全く聞いてもらえない」と社員が思っている職場は、そもそも「自分の意見を言う」ということに慣れていません。
「意見を言っていいんですよ」といくら言っても、そうそう簡単に話すことはできません。
それくらい自由に発言することを虚勢されてきたからです。
職場の雰囲気が「冷め切っている」ことに慣れすぎている場合はこうなります。
このコミュニケーションワークショップはいわゆる「導入」です。
ここでは個人のコミュニケーション能力の中のスキルである「要約力(自分の考えを短い言葉で発言する)」がどのレベルにあるかを、ファシリテーターは観察します。
このコミュニケーションワークショップを毎週繰り返すことにより、スタッフの方から自発的に「自分たちで取り上げたいテーマ」を発信してくるようになりました。
吉本歯科医院では、3回このグループワークを行った時点で、この職場では「スタッフ一人一人が誰でも好きなように意見を出し合える雰囲気」が勝手に出来上がってきました。
本当の意味で安心した時、人は初めて自分の言葉を話すことができるのです。
この自然発生的に、というところがこのダイナミックワークショップの大きな特徴です。
そして、それぞれの能力を引き出せる雰囲気作りの土壌が出来上がります。
土壌が出来ればその次はやはり草花を咲かせるのは「栄養」を与えなくてはいけません。
その「栄養」に匹敵するのが、次のステップです。
吉本歯科医院の場合では、
院長先生の「診療理念」をスタッフ全員に浸透させる、ということがねらいでした。
いわゆる、会社ではよく「クレド(企業理念)」などといって、社員に教えていることがありますが、その多くは、上司からの一方的な思い込みや押し付けがほとんどで、どこかから借りてきたような立派な言葉を飾り立てても社員に浸透することは、まずありません。
吉本歯科医院という歯科医療だけなく、全ての会社経営をしていく中では、トップの「企業理念」は必要不可欠なものです。
「企業理念」=「社長の想い」ですので、その想いに賛同してくれる社員が多くいればいるほど、その会社は強く、また、潤っていくのです。
企業理念の社員への浸透、これは何を置いても徹底させなければならない最優占事項なのです。
吉本歯科医院の場合、院長先生の診療理念をスタッフ全員に浸透させるためのワークショップを行いました。
参加するのは院長はじめ勤務医の先生、マネジャー、カウンセラー、受付、歯科衛生士さん、全てです。
吉本歯科医院で行っている治療や診療内容は、非常に特殊で通常の歯医者さんとは全く違った概念で診療を行っているため、患者様にその細やかな内容をご説明し、納得していただくためには最終は院長先生自らが患者さまと長い時間をかけてお話をしなくてはなりませんでした。
しかし、院長先生としては、スタッフ全員が院長先生が考えていること、伝えたいことを患者さまにお伝えしてくれればこんなに助かることはない、と思っていました。
これはどこの会社でも同じですよね。
社長の考えをそのまま理解して、納得してお客様、あるいは、部下に確実に伝えてくれればこんなにありがたいことはない、と思います。
まず、吉本歯科医院では、院長先生に診療に対する考え、そして、理念、治療の基準など、院長先生がどうしても患者さまにお伝えしたいことをお話して頂き、文書にまとめました。
そして、スタッフ全員がその話を聞き、院長の理念が書かれた文書を読みます。
そして、それぞれにその文書に書かれたことを考えます。
次に、一人一人が全員の前で、「自分の言葉」で院長の診療理念をスピーチをします。
この文書を読む、ということは「知識」として知る、ということです。
しかし、「知識を知った」だけでは、何の役にも立ちません。
なぜなら、「知識を記憶しただけで、体で実行していないから」です。
「知識がある」ことと「理解している」ことは、必ずしも、同じではありません。
「知識」は単に記憶したにすぎず、習得した知識を声に出し、体で実行してみてはじめて「理解した」と言う事になります。
院長先生の書いた診療理念を知識で知り、覚え、そしてその知識を全員の前でスピーチすることで、はじめて「自分の言葉」となります。
そして「自分の言葉」でスムーズに話せるようになってはじめてその内容を「理解した」となります。
あとは、そのスピーチを何度も何度も人前で繰り返し話すトレーニングを重ねます。
同じことを何度も何度も繰り返すうちに、自分なりに、「もっと上手に伝えるためには」という工夫ができてきます。
上手に「伝える」コツは、「知識を覚えただけでは人にはそうそう簡単には伝わらない」ということをその身に実感することが一番です。
人に伝えるためには、本当に自分が理解し、納得する必要があることを身をもって知るのです。
「知識」を教え、「理解」をさせ、そして「体に浸透させる」
これがダイナミックワークショップの教育の基本です。
そして、吉本歯科医院での院長先生の診療理念が浸透しはじめた頃、次のステップを同時にスタートさせました。
「自由に意見を発言しあえる職場風土」そして、「トップの考えをスタッフ全員が共有」しはじめた頃には、自然にスタッフ間のコミュニケーションが非常に濃くなり、現場の状況がスタッフから上司へ上がってくるようになります。
クレームや、問題点が部下から上司へスムーズに上がってくる、ということは会社にとっては最高の状態です。
風通しのいい関係というのはコミュニケーションが図れているということなのです。
ここまできて、さらに次のステップです。
今度は外に向けての教育です。
吉本歯科医院で言うと患者様の応対、つまり「接遇応対」ということです。
吉本歯科医院では、高度な技術を提供することから費用も高額になる場合が多く、通常の歯医者さんのような応対では、患者様は満足されないであろう、ということで院長先生は、スタッフ全員に向けて「接遇研修」などを何度も行っていました。
しかし、「やらされた研修」では限界があり、研修の場では、教えられたとおりにふるまいはするけれど、実際の業務に入ってしまえば、またもとの状態に戻ってしまっていた、と言います。
この「接遇研修」においても人間科学研究所のダイナミックワークショップの基本は同じです。
ということです。
通常、一般の接遇研修では正しい応対の仕方、という知識を教えます。
いわゆるマナー研修というものです。
おじぎの仕方、お茶の出し方、挨拶の仕方、お見送りの仕方、など細かくパターンにわけ「こうしなさい」という知識を教えていくわけです。
しかし、目の前に居る人はどんな人か、今どんな気持ちなのか?といった人が持つ「感情」に対する視点がすっぽり抜け落ちているのです。
人はどういった時に喜びを感じ、満足し、感動し、
そして、また、ここに来たい、この人に会いたい、と思うのか、という人の心の動きに対するアプローチが全くできていないのです。
そして、ロールプレイングで実際に講師と一緒にやってみたりしますが、これでは残念ながら一過性で、その後、職場で定着することはまずありません。
実際に、そのような研修を行って「感じのいい応対」を実現している会社やお店をほとんど見たことはありません。それが接遇研修、マナー研修の限界です。
知識さえ覚えておけば、あとは何とかなるだろうというのが企業の考えですが、何ともならないのが現実です。
人間はロボットではありません。
血の通った感情を持った一人の人間です。
人間という存在に対して「こうすれば、こうなる」というパターンは通用しないのです。
通用すると思っているのは、人間という存在を深く知らないからです。
人間科学研究所では、この「接遇」ということに関しては、20年以上提唱言し続けていることがあります。それは
「接遇能力」とは「人生をたくましく生きる最高の武器である」ということです。
極端な話、「接遇の能力」があれば、どんな状況でも生き抜いていける、と感じているからです。
また、接遇の能力があれば人はいつでも人生を変えることができる、と思っています。
「接遇」つまり、「接して遇する」ことを言います。
そして、接遇は一瞬が勝負です。
接遇能力は人間だけができる、最高の能力です。
接遇能力は
気配り、
目配り、
心配り、
これらの根底にあるもの、それはすべて「察する」という日本人独自の文化なのです。
そしてこういったことを一瞬で「察して」、間髪入れずに「動ける」ことなのです。
また、高度な接遇能力は「日本人だけができる」ことなのです。
日本独自の「おもてなし」と西洋からやってきた「サービス」の違い、はここにあります。
※おもてなしとサービスの違い
ぱっと会って「とにかく感じがいい」
これはどんな仕事をする場合でも、絶対に必要な能力です。
第一印象と言われるものですが、そんな社員がたくさんいる会社には、お客さんという名のファンが多く付きます。
これは人間の心理です。
「この人は自分に対して感じがいい」=「自分を受け入れてもらえている」と認識しますので、自分を認めてくれるところに人は勝手に集まってくるものです。
吉本歯科医院の接遇ワークショップでは、
「患者さまが心地良く満足されるには自分たちはどのようにしたらいいか」ということを
スタッフ全員で話し合いました。
STEP①、STEP②で「スタッフ全員が意見を出し合える風土」が出来て、「院長先生の診療理念が浸透」しているので、スタッフ自らが「意見を出し合う」ようになっているので、ここまでくれば何をテーマにしてもスムーズにワークショップは進むようになるのです。
「感じの良い応対」「お客様を満足させるような応対」を会社やお店として実現させようとした場合、ポイントは、「それを実際にやる社員」に自ら考えさせ、発案させることです。
そして、発案したことを、上手に導き、行動に落とせるまで繰り返しトレーニングすることができれば接遇は必ず定着していきます。
重要なのは、「自分たちがやるんだ」という意識を社員の心の中に植えつけることです。
そしてそれは強制されたものであってはいけません。
あくまでも、「私がこうしたい」という自発的な欲求を促しながら導いていくのがポイントとなります。
吉本歯科医院では、患者さまに満足していただくために、どのような応対をしていけばいいのか具体的に意見を出し合い話し合いました。
実際に患者さまの立場になって玄関から入って、待合室、そして受付、診療室、お帰りの会計、お見送りまでの患者さまの流れを一通り細かくホワイトボードに書き出していきます。
そして、それぞれの立場で患者さまに出会う瞬間に自分は、どんな表情で、どんな気持ちで、どんな声で、どんな態度で、どんなご挨拶をすれば心地良く感じていただけるかを全員でシミュレーションして考えます。
「私ならこうしてもらったら嬉しい」
「私ならこうしてもらった時、感動した」
「こんなことはしてほしくない」
など、いろいろな意見が飛び交います。
それは、「自分ならどうしてもらったら嬉しいか」という自分の感覚や感情が主体になって考えるのでいくらでも意見が出てくるのです。
考えることではなく、「感じた」ことを言葉に出せばいいので簡単です。
そしてたくさん出てきた意見を集約し、「吉本歯科医院の接遇の基準」というものをここではじめて作成します。(=文書化します)
これは与えられた接遇マニュアルとは似て非なるものです。
スタッフ全員が自発的に話し合い、意見を出し合い作りだしたマニュアルなので、浸透のスピードが違いますし、そのベースとなる気持ちが違います。
「やらされ感」がない、ということは大きなポイントなのです。
そして、その文書化した吉本歯科医院の接遇マニュアルを、STEP②で行った「企業理念の浸透」のワークショップと同じように今度は、体にしみ込ませるために何度も何度も実際にやってみるのです。動いてみるのです。
この際にファシリテーターは、実際にマニュアル化したことが行動としてできているか観察することが必要です。
また、「接遇」に関して高い知識と、基準を持っていなくては指導することはできません。
そもそも、「接遇応対」は、人の心を満足させるために行うものです。
そして、接遇応対は、それを自発的にやっている自分たちの同時に満足させていくものです。
感じのいい応対をする→感謝され笑顔を向けられる→笑顔につられて自分も笑顔になる→笑顔になってさらに感じのいい応対をする→感謝される
こうやって良いサイクルがまわり始めるのです。
接遇の達人は、心からの笑顔を絶やすことはありません。
なぜでしょう?
決してやらされているからではありません。
「感じよく応対」した方が自分が満たされることを体で知っているからです。
これは体験した人しか分かりません。
接遇能力は決して強制してはいけません。
接遇能力は「良い環境」と「良き指南役」によって引き出されるものなのです。
このような話し合いを主としたワークショップに必要なのは、その場を正しい方向に導くためのファシリテーターの存在です。
優秀なファシリテーターがいる会議やシンポジウムでは、思いもかけない素晴らしい発想がどんどん生まれてくることがあります。
ファシリテーターとは、「会議や話し合いの場などで、議論の内容に対して公平な立場にたち、話し合いのプロセス(流れ)に介入してファシリテーションを行う者のこと」という意味ですが、つまり、よき指南役という存在です。
ファシリテーターの能力として必要なことは以下の通りです。
「うなずき」「あいづち」を中心として、熱心に、関心をもって聴いている態度をはっきりと示せるということ。話を合いをする相手に対して「とにかくここで話し合うことが楽しい」という雰囲気にさせられることが重要です。
各テーマごとに、「これからどういうことを話し合うのか」を的確に説明し、目的に沿った話し合いを促す技術です。
話し合いが始まると多くの場合は、話の流れが垣根からはずれた、トンチンカンな発言をする人が出てくることがあります。そうなった場合、話の流れをスムーズに元に戻し、再度、話題の垣根を説明する必要があります。
話し合いが活発になればなるほど、逆に垣根が不明になってきます。
「あれ?何について話をしていたんだっけ?」という状態に陥りやすいのが話し合いです。
話の垣根を維持するには、垣根が不明になったそのタイミングであらためて垣根を説明し直すということが必要です。
ファシリテーターは、話題の垣根を説明したら、後は、「傾聴技術」と「垣根の維持の技術」を駆使して、ゆったりとした態度を示して聴き役に徹します。
そして話し合いを観察しながら、「今、話し合われている内容は今回のテーマに対して十分応える内容になっているか」ということに神経を集中させているということです。
表情や態度はゆったり笑顔で、しかし、頭の中はフル回転、といった感じ、それがファシリテーターの役割です。
以上が、吉本歯科医院で実際に行われた(現在も行われている)ダイナミックワークショップの流れです。
このようにSTEP1からSTEP3までを時間差でスタートさせていきます。
吉本歯科医院の場合は、約4ケ月かけてSTEP1〜STEP3までを行いました。
その変化は目を見張るものがあります。
ダイナミックワークショップというグループワークを経て社員同士は、そのプロセスでさまざまな感情や体験を共有します。
人を変えるために必要なことは知識を理解することではありません。
人が変わるためには、1000の知識や理屈ではなく、たった一回の体感、そして実感なのです。
実際にこのダイナミックワークショップを受けた人達の多くは
「はじめはいつもの研修だろうと思って毛嫌いしていたけれど、だまされたと思ってやってみら想像以上のことが起こり驚いた」と言います。
これは、実際にやってみて心と体が実感してみないと言えない発言です。
また、最初は「また、研修やらせるんだな」「出来るならしたくない」と本音では思っていた人がほとんどだと思います。
しかし、毎週のように集まりお互いの経験を持ち寄り、それぞれの体験を通じて話し合い、学びあう中で、研修や教育といったマイナスのイメージが払拭され、社員同士が感じていた壁も自然と取っ払われていることに気が付きます。
そして、一緒に働く仲間同士が協力しあえることの大切さを実感していくのです。
個人ではなく、その組織全体として、共通の体験を共有すること。
そして、自分たちのスタイルを共に築きあげていくこと、そのプロセスは、今までの停滞していた組織を一気に変える強い力を持ちます。
今、多くの企業では、従来のような「飲みニケーション」を復活させよう、とか、社内での交流の場を増やそう、といった動きが増えてきました。
それはなぜか?
同じ時間と場所を共有し、そこにいる人間同士が互いの感情を伝えあうこと、気持ちを交流させること、そしてそのことによりあたたかい感情を分かち合うこと、そのこと自体が人間が生きていく上で何よりも大切なことです。
なぜなら、そこがベースとなって、「人と人との信頼」がはじめて築くことができるからです。
人は誰しも一人では生きてはいけません。
自分以外の誰かの助けや協力が必要です。
そして、組織は、自分ひとりでは実現しえないことを実現させ、そこに関わる人達を幸せにするためのものです。
しかし、時として組織は、「利潤を追求するため」に、あらゆることを効率化し、そこで働く人間までも効率化しようとしてしまいます。
そしてそれは社員を追い込み、疲労させ、人格を壊していくことにもなります。
だからこそ、組織に関わる人たちは、組織に振り回されない知恵と、社員が幸せに安心して働ける組織を作りあげる必要があります。
一人一人の集まりが組織です。
一人一人に感情や心があるように、その一人一人の集合体が組織ですので、当然、そこにいる人が醸し出している雰囲気が、そのまま組織としての雰囲気ということになります。
その組織としての雰囲気をそこで働く仲間みんなでいい状態にしていく、そのために、お互いが協力しあい、お互いに関心を持ち合い、そして認めあい、励ましあう。
そのことが一人一人の「あたたかい心」を引き出し、それこそが「やる気」を自発的に起こさせていく原動力となっていくのです。
この社会は例外なく「人と人」が関わってできています。
人間科学研究所のダイナミックワークショップは、「人との関わり」を専門に、あらゆる企業、学校、行政機関への問題解決のお手伝いをしております。