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人間科学研究所とは

日本人に成果能力主義がそぐわない理由

能力主義や職能給、実力昇格、成果主義などが日本の企業に導入されて約10年が過ぎました。
その導入により活性化した企業もあれば、代わり映えしない企業もあります。
多くは代わり映えしない側です。

日本の実情から言えば、このシステムはそぐわない面が多々あります。
そぐわない最大の問題は、民族が違う、という点です。

アメリカのシステムは、アメリカ人にとって必要だから生まれたのであって、日本人にとって必要なのかどうかは全く別の問題です。

人間が同じだから、企業という器が同じだから、と言った理由だけで外国のシステムを導入するのは、日本人が持つ民族固有の特性を無視しているので適応することは非常に困難です。

アメリカで生まれたシステムは、なぜアメリカで生まれたのか?
ということを明確に把握しておく必要があります。

つまり、アメリカにとっての民族固有の問題があり、仕事に対する意識、職場での人間関係など、多民族が混在しているところから(人種差別など)価値観も多様です。

それらは、わたしたち日本人にはほとんど理解できないものばかりです。
つまり、風土も民族も違う、という事実なのです。

そういったところから、仕事の能率を上げるためにはある一定の定規を用いる必要があったからです。

これは労働者を管理するための抑圧型の評価方法だと思って下さい。

つまり、項目を並べ、それをクリアしなければ、それをマイナス材料として評価する、という事です。
こういったことは人種差別が厳然として行われている社会だから必然的に出てきた方法です。

私たち日本人には「働く」ということにそのような管理、抑圧は必要ではありませんでした。

働く、とは、はたを楽にする(そばにいる人を楽にする)という気持ちが原点にありました。
そしてこの「気持ち」、という点が日本人特有のものなのです。

はたを楽にすると、感謝され、そのことによって、また自らの働く喜びが湧きあがって来る、そんな雰囲気の中で私たち日本人の働く意識は育まれてきました。
いまとなっては信じられないかもしれませんが、それが日本人がはぐくんできた「働く喜び」だったのです。

合理主義社会の典型的な例のひとつに、成果主義というものがあります。

成果によって報酬をリンクさせていけば、社員はよりよい報酬を求めてさらにやる気を起こし、頑張るはずだ、というシステムです。
たしかに、一見すると、社員が活性化しそうな気がします。

しかし、結果は全く違ったものでした。
ある会社で成果主義を取り入れた会社がありました。
取り入れた最初は、やる気のある優秀な社員は高い目標を設定えし、なんとか自分の報酬を高く得ようと努力をします。

しかし、報酬を得ることだけが目的になった社員は社内の中でも社員同士が疑心暗鬼になり、報酬に繋がる業務だけに目がいってしまい、それ以外の、業務を円滑にするために必要な事務名仕事はまったくおろそかになってしまいました。
そして高い報酬を得たいという欲求は肥大することばかりで、その欲望は際限がない。
人間の欲望は「もっと、もっと」となってしまうと終わりはないのです。

つまり押してはいけないスイッチを押してしまったのです。
そして何よりも成果主義は、会社の雰囲気を暗くしてしまいます。
人間関係はぎすぎすし、上司と部下の関係は不信感がつのります。

また、アメリカ式、つまり、現在言われているところの西洋的な方式はすでに限界に来ている、という事実も認識しておく必要があります。

これは経済を見るまでもなく、西洋解剖学的なものの見方の崩壊です。

つまり、人間の身体を部分的に検査し、治療することでは病気は治らない、ということがアメリカにおいても認識され、ここ十年ほどでホリスティック的な(身体全体を見る=東洋思考)医学に切り替えつつあります。

つまり、部分の分析解析では全体を見ることが出来ないという認識であり、病気になっているのは身体全体の相互の関係であることを認めてきている、ということです。

人間というものを物質的なものの見方をしてしまい、病気になった部分を切り取れば治るのでは?という考えです。

病気になってしまった原因を探るのではなく、なった部分を対処療法的に治療する、という考えです。

研修や評価のシステムは、テレビやコンピュータのような形のある製品ではありません。

どちらかと言えば医者の診断に近い無形のものです。

形ある製品なら、国境を越えて、いわゆるグローバル・スタンダードとして地球を席巻することは可能です。

しかし、人間そのものと関わることは、残念ながら国境を越えるわけにはいかないのです。
それが民族固有の問題であり、遺伝子の問題なのです。

例えば、簡単に考えてみて下さい。
アメリカの常識が、中国で通用するでしょうか?
アメリカの常識が、日本で通用するでしょうか?
それが民族の固有性であり、良いとか悪いとか言う問題ではない、大きな問題なのです。

なぜ、アメリカでこういったビジネスのノウハウが多く生まれているか?
答えは簡単です。

一生懸命働かない人間が圧倒的に多い、ということであり、色々なルールを守れない人間がたくさん居る、という事実からです。

そういう基本的なことをきちんと押さえておかなければ日本人が本来持っているはずの素晴らしい能力まで潰されてしまうことになってしまいます。